Tuesday, 31 January 2012

Beginners

マイク・ミルズ監督の『人生はビギナーズ』を鑑賞しました。
原題の「ビギナーズ」に「人生は」と付けたとたん、どうしてこんなにタイトルの印象がかわるのだろう。
邦題マジック恐るべし・・・と思いながら。

主人公は38歳のアートディレクター、オリヴァー。
物語は彼が父親ハルの遺品を整理しているシーンから始まります。
75歳にして突然に「わたしはゲイだ」とカミングアウトし、残り少ない人生を自分らしく生きようとした父。
父は母を愛していなかったのだろうか。父は幸せだったのだろうか。
そんなことを考えれば考えるほど喪失感は大きくなってゆくばかり。
すっかり塞ぎこんでしまった彼の唯一の話し相手といえば、父の忘れ形見である犬のアーサー・・・。

そんなオリヴァーの様子を見かねた友人はある日彼を仮装パーティーへと連れ出します。
そこで彼が出会ったのは、アナというちょっぴり不思議な女性。
すぐに惹かれ合い、デートを重ねるようになった2人はどこか似た者同士。
アナはオリヴァーの心にぽっかりとできていた空白を少しずつ少しずつ癒してくれました。
だけれど途中から何かが上手くいかなくなって、少しずつ2人の歯車が狂いはじめ
幸せが、あっという間に消えそうになってゆくのです。

スクリーンに交互に映し出される、過去の出来事と今の自分。

その所々に挿まれる、父が生きた保守主義の50年代---同性愛は精神疾患であると疎まれた時代---の
写真やコラージュが、淡々と進んでゆくお話に心地よいリズムを与えています。


ガラスのように繊細なハートを持つ38歳のオリヴァーを演じたユアン・マクレガーは本当にハマり役で
お父さんを演じたクリストファー・プラマーも素晴らしかったし
アナ役のメラニーちゃんもフランス訛りの英語がとてもキュートだったけれど
キャストの中でわたしが一番心をうたれたのは
アーサー役のジャックラッセルテリア、コスモくん!!


ハルを亡くした悲しみを誰よりもオリヴァーとシェアしているのはこのアーサー(犬)。
いつでもどこでもトコトコとオリヴァーの後ろを追いかけ
部屋に置き去りにされれば「ワウーン!ワウウゥーン!」という切ない鳴き声で飼い主の心を揺さぶり
人間の言葉を理解し、飼い主が悩んでいれば声なき声でアドバイス!
なんて健気。なんてかわいいの。
普段はネコ派を公言しているわたしもすっかりコスモくんのファンになってしまいましたよ・・・。


これはマイク・ミルズ監督の実体験に基づくストーリーだそう。
そう言われればオリヴァーが仕事場で書きためるイラストは『サムサッカー』のパンフレットの表紙みたいに
マイク・ミルズのドローイングそのものですし(監督による映画のドローイング集、今欲しい本ナンバーワン)
オリヴァーのどこかエキセントリックな母親が美術館の作品の前でヘンテコなポーズをとる場面は
マイク・ミルズのパートナーであるミランダ・ジュライの映画"The Future"にでてくる
ミランダのヘンテコダンスシーンを紛れもなく彷彿とさせてくれますし(母の髪型もミランダそっくり)
そういった点からも、監督のプライベートが強く投影された作品なのだなと思いました。


主人公の喪失感が画面から溢れ出てきそうなくらいに伝わってくるけれど、なんだか全部があたたかい。
幸せになりたいけれどどうすればいいのかわからなくて苦しくて
いざ幸せになると怖くなって自らそれを手放そうとしてしまう、また孤独になることを選んでしまう。
ずっとずっと大きな悲しみから抜け出せない。
そんな人たちの背中を「大丈夫ですよ」って言いながら、そっと押してくれているような映画でした。



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