Wednesday, 22 February 2012

MELANCHOLIA

憂鬱の星が地球を襲うとき、一抹の希望が見えてくる。
それはただひたすらにしなやかで優しいのです。


ミレイのオフィーリアみたいなポスターが印象的な『メランコリア』。
ラース・フォン・トリアーの最新作。

絶望的で救いようのない映画『ダンサーインザダーク』を撮った監督。
その映画は、デビッド・リンチ監督の『エレファントマン』『ロストハイウェイ』と並んで
個人的にもう二度と観たくない映画ベスト3に入ります。
「自分が!自分が!!」
と強烈に主張してくるようなトリアー作品はあんまり好きじゃなかったのだけれど
『メランコリア』は内容がすっと腑に落ちて「あぁもう一度観たいな」と思えた映画でした。


妹ジャスティンと姉クレアに焦点を当て、2部構成で綴られる物語。
大邸宅で催された結婚式の最中、恐ろしい程の空虚な感情に襲われている花嫁のジャスティンは
次第に常軌を逸した行動を取りはじめ、自らの式を最悪のものにしてしまいます。
当たり前のことができず、憔悴しきってしまう。どうやら鬱病みたい。
それでも空に光る星---地球に異常接近をしている惑星メランコリア---のことを考えると
彼女の心は不思議と落ち着いてゆくのでした。
一方でしっかり者の姉のクレアは、メランコリアが地球に衝突するのではと気が気ではありません。
天文学者の夫に「あの星は接近してもすぐに通り過ぎる、衝突はしない」となだめられるも
日々募ってゆく不安をぬぐい去ることはできず、段々と不安定な精神状態に・・・。

「惑星が地球に衝突」なんて聞くとどうしてもSFパニックムービーを想像してしまいますが
この映画はどこまでも静か。
台詞が一言も登場しない冒頭の8分間。リヒャルト・ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」にのせて
世界の終わりを象徴する恐ろしい程に詩的で美しい映像がスローモーションで流れるのです。
ここでもうわたしの心は「グワシッ!」とまことちゃん級に鷲掴みにされてしまいましたよ。

映像美と同じく衝撃的だったのはキルスティン・ダンストの演技。
『バージンスーサイズ』や『マリーアントワネット』に代表されるように
昔から虚無感を体現する少女役がお似合いというイメージが強かったキルスティン。
きっともう体は少女ではないけれど
彼女の内に秘めたる鬱々とした少女性は極限まで張りつめられ、スクリーンから溢れ出しています。
時に抜け殻のように、時に無邪気に、時に神々しく。
これはもう、観終わった今となっては他のキャスティングが想像できません。

舞台は森の中の大邸宅に絞られ、登場人物がいたって少ないこの映画。
『アンチクライスト』の時と打って変わって普通の人を演じたシャルロット・ゲンズブール、
彼女の旦那さまに『24』ジャックのイメージが強すぎるキーファー・サザーランド、
この母にしてこの娘ありのとんでもない母役にシャーロット・ランプリング、
と脇をかためる俳優陣も非常に豪華で、うっとりしてしまいました!

キルスティンも監督も過去にうつ病を患っており
2人ともその時の経験がこの映画に生かされた、という風にインタビューで語っているようですし
やはり作り手の自己が投影された作品は
観る者に圧倒的な力で語りかけてくるものなんだなぁと感じました。

刹那的でこの上なく美しい映画!!
今も頭の中でずっとワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」前奏曲が鳴り続いています。


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