Wednesday, 25 April 2012

Robert Doisneau Centennial Retrospective


涙がでそうになるくらいの多幸感で心がひたひたになりました。

東京都写真美術館で開かれている、ロベール・ドアノーの生誕100周年記念写真展。

I.パリ郊外〜城壁の外側 II.冬の時代から占領からパリ解放まで III.郊外の休日
IV.パリ〜イメージの釣り人 V. 『ヴォーグ』の時代 VI. ポートレイト
VII. ロベール・ドアノーとカラー VIII.子供たち IX.変貌するパリ
の9編から成る200点の展示品。
ドアノーの代名詞であるパリの日常写真はもちろんのこと
大戦中の対独地下活動記録写真から日本初公開のカラー写真、国土整備庁の任務による写真までが並び
わたしの想像以上に充実の内容でありました。


1912年、パリ南部の郊外ジャンティイに生まれたドアノーは、石版工の資格を取得後
写真家アンドレ・ヴィニョーの助手を経て独立、産業カメラマンとしてルノーに入社。
しかしながら相次ぐ欠勤と遅刻を繰り返したため同社を解雇され、フリーへと転身。
第二次世界大戦中には軍へ招集されるも体調を崩し除隊、その後自由フランスのレジスタンス運動に参加。
家族を養う為にVOGUE誌の契約カメラマンオファーを引き受けるも
華やかな社交界やファッションモデルの写真を撮るのは性に合わなかったらしく
たった2年で彼は「喜んで」、契約を終えたという。何かに縛られることが大嫌いだった人。

「わたしは芸術家ではない。」

アートではなくヒューマニズムとしての写真を追い続けていたドアノーの自由な精神が
カメラの被写体として求めていたものは
いつだって、何気ない日常に起こっているであろうドラマティックな瞬間でした。

『パリ市庁舎前のキス』
Le Baiser de l'Hotel de ville,1950

『ポロネギを持つ恋人たち』
Les Amoureux aux poireaux, 1950

『かがんで口づけ』
Baiser blotto, 1950

『雪の積もったエッフェル塔』
La Tour Eiffel sous la neige, 1964

『リヴォリ通りのスモック姿の子供たち』
Les Tabliers de Rivoli, 1978


「何気ない日常を切りとる」といっても、パリで撮影された彼の写真の中には
全てが計算された上で撮られた「演出作品」なるものがいくつかあります。
写美の入り口前に大きく引き延ばして飾られている、かの有名な『パリ市庁舎前のキス』だって
実はアメリカの雑誌社から注文を受けて撮影された組み写真の一部。
それでも
「この写真は仕込まれたものでなく、パリの街角で実際に起こったロマンチックな瞬間を捉えたものなんだ。」
と思うには十分すぎるほどの「一瞬の偶然」感があふれてる。
白黒の写真を通して伝わって来る彼の視線はどこまでもあたたかくて優しく、時々ユーモラス。
演出された写真でも、そうでない写真でも。
これがきっと「ドアノー劇場」と言われる彼の作品の共通点なのです。


メトロのオペラ駅で、リュクサンブール公園で、ヴァンドーム広場で、サンマルタン運河で。
バスティーユで、エッフェル塔で、ポンヌフで、ポンデザールで・・・。
永遠に流れてゆく時を止めフィルムの中に閉じ込めておく天才だったロベール・ドアノー。
彼が生まれてから100年、その写真の魅力は衰えず、むしろ輝きを増すばかり。
当時のパリへ迷い込んでしまったかのような錯覚を覚えました。