Sunday, 1 July 2012

AGATHA et les lectures illimitees

この前K'sシネマで、とてつもない映画を観てしまった。

あぁこれはどうやって言葉に書き留めればよいのだろうか
いっそのこと感想なんて書かないでおこうかなんて思ってはいたのだけれど
心の中に残っているその映画の余韻がだんだんぼんやり薄れていって
ある日ぱちんと消えてしまったのではあまりにも寂しいので
やっぱり自分のために、自分なりに、感想を残しておこうと思ったのでした。


その映画とはマルグリット・デュラスの『アガタ』。
フランス語のタイトルは『アガタ、終わりなき朗読』とでも訳せばよいのかな。

『愛人 ラマン』で世界にその名を知らしめた
フランスが誇る稀代の作家兼映画監督マルグリット・デュラスが、自身の著『死の病アガタ』を基にして
1981年に手掛けた異色の映画です。

色々な意味で実験的要素の強いこの作品はその極度な非商業性から当時の日本では公開されず
制作から21年目の2003年にやっと初公開にこぎつけたそう。
それからさらに9年経った今、新宿の小さな映画館で再び上映されています。


空と海とが溶け合ってくすんだ青色をしたトゥルーヴィルの浜辺の景色と
薄暗くて古びたホテル、そこで再会した兄と妹の様子がスクリーンに交互に映し出される。
そこから聞こえてくるのは
微かな波のさざめきと執拗に繰り返されるブラームスのピアノワルツ作品39第15番、
そしてどこまでも続いてゆくような男女の朗読の声だけ。
その映像と音は、完全に分離している。

妹は兄から遠く離れた場所に明日旅立つと言う。
兄は行かないでくれと懇願する。

「いなくなるなら僕を殺してくれ。」
「あなたを永遠に愛し続けるために離れるの。」

男女の会話が進むにつれて紐解かれてゆく兄弟の秘密。
ある夏の日若い兄妹に起こった、あってはならないはずの出来事が2人の在り方を変えてしまったのです。
もう二度と会うことはないであろう2人。それでも心から愛するのはお互いだけだと言う。

朗読の声の正体は
マルグリット・デュラス本人と、彼女より38歳年下だったパートナー、ヤン・アンドレア。
ヤンは朗読だけでなく映像でも兄役として出演しています。
元々デュラスの小説の大ファンで、5年間も彼女に手紙を書き続けていたヤン。
ある日彼女の滞在しているホテルまで会いに来るよう呼び出され
デュラスが亡くなるまでの約16年間、2人はずっと一緒だった---。

いろんな愛のかたち。
そう、この映画も、きっとそんないろんな愛のかたちのひとつ。

流れるように朗読される言葉はどれも美しくて、それがわたしをとてつもなく悲しくさせるのです。
その悲しみは、とても心地よい悲しみ。
広い海の上にひとりでぷかぷか浮いているみたいな。
(わたし泳げないけど)

いやぁ・・・すごい映画でした。