Sunday, 13 January 2013

Cat in the Rain

一度読んだ本を暫くしてから読み直してみる度
以前は気にも止め無かった部分に「はっ」とする気付きが隠れていたことを知ります。

新しい発見。
自分が大人になることで、見えなかったものが見えてくる。

大学生時代に読んだヘミングウェイの短編集をこの前たまたま再読したのだけれど
それこそまさに新しい発見の連続で、どきどきさせられてしまいました。

とくに"Cat in the Rain"の切なさには、涙すら出てきそうになったんです。
21歳のわたしはあのときこのストーリーを何とも思わなかったはずなのに。


イタリアのある海辺の街に滞在しているアメリカ人の夫婦。
その日は雨が降っていて、夫人は窓の下に小さな猫がうずくまっているのを見つけます。
雨にあたらないように、身を縮めながら。
猫を連れてこようとする夫人。興味を示さない夫。
傘を差し出してくれたメイド。親切なホテルのオーナー。
外に出ると、猫はもういなかった。

"Ha perduto qualque cosa, Signora?"

"There was a cat."

"A cat?"

"Si, il gatto. Oh i wanted it so much. I wanted a kitty." 


何か失くされたのですか、奥様?

猫がいたの。とても欲しかったの。あの猫が欲しかったの。
髪をのばしたい。借り物でない銀の食器で食事がしたい。
キャンドルが欲しい。今が春だったらいいし、鏡の前で髪にブラシもかけたい。
そしてそれから子猫が欲しいの。子猫が欲しいの。


少女のような1人の夫人の、堪え難い孤独がじわじわじわじわとわたしの心に染み込んでくる。
ひとりでいるのは寂しい。ふたりでいても、もっと寂しい。

結婚した夫の支配と無関心。あの猫はわたし。

シャーロット・パーキンズ・ギルマンの『黄色い壁紙』を思い出したりしました。

ヘミングウェイはこれを24ー25歳の頃に書き上げたという・・・。

飴細工みたいに繊細な、みじかいみじかい物語です。