Thursday, 10 April 2014

Blue is the Warmest Color

観賞後にじわじわズドーンと心にくる映画を、久しぶりに観ました。
昨年のカンヌ映画祭でパルムドールを獲得してことでも話題に新しい
『アデル、ブルーは熱い色』。

アデルと聞くとわたしはどうしても仕事場のボス(ちょうこわい)を思い出してしまうので
あのアデルとこのアデルは別のアデル!って何度も自分に言い聞かせ、
それでも最近やらかした仕事のミスなんかを断片的に思い出し
ちょっぴりしょぼんとした気持ちになりながら映画館へ足を運びました。
しかしどうでしょう。上映が始まるやいなや、
わたしの頭の中にいたボスのアデルは別世界へと飛んでいってしまった。
映画を観た3時間、この世にアデルはひとりだけだったの。

フランス語原題は"La vie d'Adele - Chapitres 1 et 2"なのだけど
わたしは英語のタイトルが凄くすきだと思いました。

作中頻繁に登場する青の色。髪の青、部屋の青、服の青。ぷかぷかと浮かぶアデルを包む海の青。
愛を表す色は、赤でもなくピンクでもなく、青なんだね!


主人公のアデルは文学好きなリセの学生。
通学バスの中で親しくなった上級生とのデートに向かう途中
青い髪の女性エマに目を奪われます。
それは偶然の出来事なんかではありませんでした。
ある夜バーで再会したアデルとエマは、急速にその関係を深めてゆきーーー。


大長編な映画の中では登場人物たちの「顔」が強調されます。
おしゃべりをするリセのクラスメイトたちの顔、キスをする恋人たちの横顔、
手作りのボロネーゼを美味しそうに食べる人たちの顔・・・。

とりわけ主人公アデルの顔のクローズアップは執拗なくらい次から次へとスクリーンに映し出されます。
だらしなく半開きにした口から大きな2本の前歯をのぞかせてすやすやと眠る様子。
フランスの若者らしくものすごい早口で友達を罵る様子。
愛する人を見て微笑む様子、恍惚とした様子・・・。
その中で特に印象に残るのは、何度か出てくるアデルの食事シーン。
どこをとっても、全くといっていいほど美しくなく、むしろ汚いのであります。
指をびちゃびちゃ舐めながらケバブにかぶりついたり、
パスタをまるで獣みたいに貪り食べたり
涙にくれ鼻水をたらしながらお菓子(チョコバー?)を食べたりワインを飲んだり。
本能!生きてる!!っていうのがびしびしと伝わってきて
わたしのアデルへの思い入れは増すばかり・・・もうかわいいんだから。

その次に注目すべきはやっぱり文学そして芸術で溢れた彼女たちの生活。
映画の冒頭、リセでの授業シーンにて"je suis femme…"と女の子が朗読しているのは
18世紀の小説家マリボーによる未完の小説『マリアンヌの生涯』。
先生はこの小説をかの有名な『クレーヴの奥方』と比較するように言う。
そうそう、エマを演じるレア・セドゥが以前出演した映画『美しい人』は、
クレーヴの奥方のプロットををげに置き換えた作品でした。
こんな風なちょっとした繋がりも楽しいですよね。
その他にもサルトルの『実存主義とは何か』と『汚れた手』、
コデルロス・ド・ラクロの『危険な関係』の名前が好きな本としてそれぞれ挙げられています。
ああ危険な関係といえばチャン・ツィイーとチャン・ドンゴンで映画化されたのに
まだ観てない!なんてこった!DVDまだかな!と映画中に思い出したりした。エマよありがとう。
そして極めつけに
クリムトはいいけれどエゴン・シーレは嫌!と豪語するエマのホームパーティーで
お庭のスクリーンにモノクロで映し出されたのは
ルイーズ・ブルックの無声映画『パンドラの箱』ではありませんか。

ちーん!とわたしの頭の中にひびく、ノックアウトの音。

もうだめ。この映画、いけてる度高すぎ。

・・・・(一瞬の気絶から復帰)・・・


『アデル〜』は女性同士の過激で長過ぎる性描写が話題となっていて
その通りにレアちゃんもアデルちゃんも大層体を張っており
「そこまで頑張るんか・・・」という感情と「まぁなんて美しいんでしょう」という感情の入り混じるような
まごうことなき名シーンではあるのだけれど
注目するところはそこだけじゃないのだって、すごく言いたい。
クィア映画という枠をとっくに飛び越えた、普遍的で誰にでも起こりえる愛のお話だったから!
今まさにこの瞬間も地球上のたくさんの場所で
人が人と出会い、人を愛し、人と別れてる。
そんな当たり前だと思ってたことのすばらしさと止まらない痛みとを、ひしひしと感じられる3時間でした。