Monday, 19 October 2015

EDEN

大人になるということは、過去からの脱却を意味します。
眩しい青春が終わりかけるころ、殆どの人は、理想と現実の間で悩みながらも
折り合いどころを見つけ、新しい人生へと舵をきる。

けれども、この映画の主人公は、そうではありませんでした。
若くして成功した彼は、いつまでも夢を見続けたいと思っていた。

ミア・ハンセン=ラヴの『エデン』。

これほど心にずどんとくる映画を観たのは、何時ぶりだったでしょう...。



静寂のなかに響く鳥の鳴き声が美しい、白みがかった夜明けの空からはじまる物語。
90年代から2013年まで。
フレンチ・タッチの中心人物となったDJポールの栄光と喪失が
様々な対比のもと、美しく容赦なく、そして温かく描かれています。

何と言っても素晴らしいのは
映画始まりから中盤にかけて次々と繰り広げられるクラブでのミュージックシーンです。
ダンスフロアに向かう途中、遠くから漏れてくる音楽と歓声を耳にしたときの何とも言えない高揚感。
上下する人々の目線、顔を近づけ耳元で話す人々の様子。
完璧なタイミングで流れてくるキラーチューン。
暗闇のなか、若者はお酒やタバコを片手に音楽に合わせて踊り狂う。
その様子全てがスクリーンから本物としての熱量を放っており、懐かしさと多幸感に襲われました。

しかし、その賑やかさは後半に一転します。

30代になったポールは、いつの間にか時代から取り残されていました。
周りの仲間が家庭を持ち、地に足のついた生活を送るようになったなか、
DJとしてガラージをプレイしつづける彼は、流行がかわり観客も変わることを、受け入れられないでいました。
ハコへやってくるお客さんの数は減り、借金は膨らむ一方。

アパルトマンの住人のおばあさんに「若い人はいいわねぇ」といわれて
「俺はもう36歳だ!(バッキャロー!)」と噛み付く、落ちぶれたDJ...。

その様子を見るにつけ、わたしのなかのまだまだ未熟な心の一部が疼きだし
辛くて辛くて、泣いた。

これは確実にわたしたちの映画だった。
どん底をみたあと、主人公は少しずつ、前を向こうとする。

彼の人生が再生へ向かうとき、クラブミュージックはもう聴こえません。
耳に入ってくるのは、海の波の音、街の喧噪。
そして物語はひたすらの静寂へと戻ってゆきます。

"Light at the opening, dark at the closing"

ロバート・クリーリーという詩人の詩とともに。