Thursday, 26 May 2016

Il Gattopardo

うららかな水曜日の午後、久々に恵比寿ガーデンシネマへと足を運びました。

最近のわたしはNetflixとHuluのヘビーユーザーと化していたので
スクリーンで良作を観ること自体からすっかり遠ざかっていたのだけれど
映画館という空間でただただ作品に没頭することは本当に素晴らしいのだと改めて実感した。

ルキーノ・ヴィスコンティの『山猫』。
計算しつくされた美しさが、これでもかとわたしに迫ってくる体験。
なんと幸せな3時間だったことか・・・!


舞台は国家統一運動の気運高まる1860年のイタリア。
祖国の統一を目指す軍事家ガリバルディが赤シャツ隊と呼ばれる私設部隊を率いてシチリアに上陸します。
それは革命と闘争の始まり。

シチリアを長きに渡って統治してきたサリーナ公爵一家は、
刻々と変化する社会情勢に貴族社会の終焉を予感せずにはいられません。

作中で描かれていたのは、
自分の生きてきた時代が終わってゆくことを悟ったサリーナ公爵の哀愁と、
未来に希望を抱く彼の甥タンクレディの姿でした。

タンクレディはガリバルディを支持し、革命軍に参加。
その後、美しい振興ブルジョワの娘アンジェリカと恋に落ちます。
実は公爵の娘コンチェッタもタンクレディに想いを寄せていたのですが、
今や貴族よりも市民階級が財を成す時代。
これから変わりゆく社会で昇り龍のごとく活躍する(多額の金が必要となる)であろう
タンクレディのことを思った公爵は、彼がアンジェリカと結婚するように取り計らうのでした。
そして物語は、1時間続く舞踏会シーンへと突入します。

本作のフィルムは「マーティン・スコセッシが設立したThe Film Foundationとグッチの資金提供により、
2010年に約1億円の費用と1万2000時間をかけて修復された」(*sourceそうです。
撮影から50年以上経っていると思えない豊かな色彩とともに広がる素晴らしい情景の数々。
特に人が波のように押し寄せる戦闘シーンと、大邸宅が狭く感じられるほどに人で埋め尽くされた舞踏会シーンのシークエンスは
生身の人間がひしめくその温度感がスクリーンを通して感じられ、本当に圧巻でした。
いくらCGの技術が発達しても、こんな風に人間の放つ熱量までは再現できないだろうな。

そして併せて語られるべきは出演者の美男美女ぶり。
サリーナ公爵夫妻と7人のこどもは全員が彫刻のようですし
アンジェリカ役のクラウディア・カルディナーレも可憐な小悪魔っぷりが素晴らしい。
加えてタンクレディ演じるアラン・ドロンの美貌は眩しいくらいでした。
いくつか観た彼の作品の中でタンクレディの彼が一番に美しく輝いていたのは、役柄のせいなのでしょうか...。

(かの有名な黒い眼帯!)


ガリバルディが両シチリア王国を征服、
その土地が北イタリアを中心とするサルディーニャ王国のヴィットーリオ・エマヌエーレ2世に献上されて
イタリア王国の成立が宣言されるまであと一年ほど。

私は不幸なことに、新旧二つの世界にまたがって生きている」

自身も貴族の末裔であるヴィスコンティの美学が詰まった3時間の大作は
花火が消える前の一瞬の輝きを描いているようであった、と思います。

世界の宝物。何度でも観たい。