Friday, 31 March 2017

EQUALS

「未体験ゾーンの映画たち 2017」で3月に1週間だけ上映されたSF映画『ロスト・エモーション』。

今のわたしの気持ちにピタッとはまるとても美しい映画だったから
観賞後、普段はあまり好きでない渋谷の街が少しだけ輝いてみえた気がした。

世界的な大戦争により地球の9割以上の土地が破壊されてしまった近未来。
人間の持つ感情こそが地球を滅亡させる元凶であると考えた政府は
遺伝子操作によって感情を持たなくなった人々の共同体をつくり、
恋愛感情や欲望を持つ人間は異常者として隔離施設に送ったのち安楽死させていました。

統制された共同体のなかで、感情を「発症」してしまったニアとサイラス。
保険局の監視を搔い潜って逢瀬を重ねる二人に待ち受けてけている結末とは。


透きとおるようなサイラスの青い瞳が印象的なオープニング。
そう、この映画は瞳の映画でもあった、と思う。

人間は感情を持たないことが当たり前とさせる世界で、彼らは最低限の言葉しか交わしません。
その分驚きや焦りや不安、愛情の目覚めと喜びといった様々な感情が呼び起こされる様子が
それはもう繊細な瞳の動きによって表現されるのです。
ニコラス・ホルトとクリステン・スチュワート、目を見張るほど美しい主演の二人の
映画前半マネキンのような無表情を装いつつ目でものを言うその演技が素晴らしかったです。

長岡造形大学やMOA美術館、シンガポールボタニックガーデンなど
日本とシンガポールで撮影されたというどこまでも無機質な白と緑でつくられた完璧すぎる近未来の世界観のなか
モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークや
ベートーベンのピアノコンツェルトといったクラシック音楽が流れるのがミスマッチで印象的だったし、
Mogwaiの"I Know You Are, But What Am I?"は映画のラストにぴったりすぎる選曲で、
とにかく映像と音楽で「魅せる」センスのよい映画でした。

世界戦争の後、人々が感情を持つことが禁止されるという設定は『リベリオン』を彷彿とさせるけれど、
この映画では、誰も世界を変えようと戦ったりしません。
ただただ恋に落ちた男女ふたりが、自分たちの幸福のために、とある決断をするのです。

人々が平和で幸福に生きる世界。
それはやっぱり、愛がなければ成り立たない。

これほどにエモーショナルでスリリングで愛に溢れた美しいディストピア映画を
わたしは今までに観たことがあったかな。